ご家族の誰かが亡くなられると、通夜や葬儀・告別式の実施、死亡届の提出など慌ただしく過ごされることと思われます。そして、亡くなられた方の財産等についての相続が発生します。相続では、様々な書類を準備して各種の手続きを行うことになりますが、お亡くなりになった方のすべての戸籍を収集したり、相続財産を確定するためにすべての財産を調査して財産目録を作成するなど、多くの時間と手間を要する作業があります。その後の遺産分割協議、相続財産の引継ぎなど一連の作業(遺言執行)につきましても、行政書士が司法書士、税理士等と連携して一括して作業をお引き受けすることが可能です。ただし、弁護士業務に関係するような、紛争性のある場合は、お引き受けすることができません。
相続が発生すると亡くなられた方(被相続人)の財産を相続する方(相続人)が引き継ぐことになります。被相続人が「遺言書」を作成しておられれば、その遺言内容に従って、相続の配分を行います。相続人が複数の場合は、その相続人全員で話し合って、遺産の配分を決定し、その結果を「遺産分割協議書」として作成し、実行します。「遺言」がなく「遺産分割協議書」も作成されない場合は、「法定相続」に従って相続を行うことになります。
遺産分割協議の内容をチェックし、書式を整えて「遺産分割協議書」を作成するお手伝いをします。「遺産分割協議書」は、不動産の名義変更登記などの官公庁への申請や銀行などの金融機関での相続手続きに役立つ書類です。
配偶者や、世話になったお子様などの特定の相続人に対する想いを、法定相続とは違う配分として文書で残しておきたい、配偶者が先にお亡くなりになり子供がいない場合、ご本人の相続について、誰にどのように相続財産を配分するかを決めておきたい等のケースでは、「遺言書」の作成をお考えの方が多いと思われます。被相続人が「遺言書」を残していた場合は、その方の生前の意思を尊重し、法定相続配分に優先して指定された相続人に財産が引き継がれることになります。例外的に、相続開始後に相続人全員の合意があれば、「遺言書」と異なる相続財産の配分を行うことは可能です。また、「遺言書」での相続財産の配分が不公平と判断する場合は、法定の遺留分について、「遺留分侵害額請求」として他の相続人に金銭的賠償を請求することも可能です。
「遺言書」は、自筆で作成することもできますが、書式を整える、有効な遺言であることを証明する、安全確実に遺言書を保管する等のためには、公証人による「公正証書遺言」で作成することをお勧めします。行政書士として、遺言書の文案を作成したり、公証人との面談に同席するなどの一連のお手伝いが可能です。
遺言による遺産の分配は、法定相続分には左右されませんが、各相続人には、最低限度の遺産(遺留分)をもらうことを請求する権利(遺留分侵害額請求権)があります。遺留分は、通常の法定相続分の半額ですが、ご本人の兄弟には遺留分はありません。遺言書を作成する場合は、この点を考慮して作成することをお勧めします。
近年、認知症などで判断力が低下した高齢者の方の財産管理を目的として、信頼できる家族にその財産の管理・処分を任せる制度が着目されています。これは、信託銀行や信託会社が提供する「商事信託」と区別して「家族信託」*と呼ばれています。
家族信託では、財産を保有する人(委託者という)がその財産の管理・運用・処分を家族等(受託者という)に委託し、当初は自分が利益を受ける人(受益者という)となってその利益を享受することが一般的なケースです。もちろんその他にも様々なケースがありますので、それらについてもご紹介させていただきます。家族信託には、遺言や成年後見制度とは違った様々な特徴・メリット・デメリットがあり、これからの高齢者や認知症の不安を抱えておられる方のための財産管理の方法としてその活用が期待されています。
*「家族信託」は、一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です
ご家族のどなたかが医者から認知症と診断された場合、その方は、契約等の法律行為ができなくなります。この場合に、ご本人や家族の方などが家庭裁判所に申請申立てをすることによって、成年後見人をつけてもらうことができます。成年後見人として誰を選定するかは、裁判所が決めます。成年後見人は、ご本人の「財産管理」と「身上看護」が主な役割です。成年後見人の財産管理の目的は、ご本人の心身の状態や生活の状況に配慮しながらご本人の生活を守ることであり、ご本人の意思を尊重し、安定した生活の確保と、より確かな療養看護の維持を行うことです。