上場株式等を信託財産とする家族信託を設定した場合には、信頼できる家族(自分の子供など)を受託者として上場株式等の有価証券の管理・処分などを任せることができます。

この場合、どのように上場株式等を管理・処分して欲しいかを、信託契約書に信託目的として明確化し、具体的な内容を信託条項として文書化しておくことによって、委託者の上場株等の保有に関する思いを家族と共有していくことが可能となります。

上場株式等を信託財産とした場合、その管理・処分の考え方として以下の2つのタイプが考えられます。

1.資産保有・管理型の上場株家族信託の運用

□ 上場株式等は、原則として売却することなく保有を前提とします。

□ 受益者は、受益権として配当、株主優待券等を受領します。

□ 株主総会での議決権の行使は、受託者と委託者兼受益者の合意で行います。

□ 上場株式等が「著しく値下がり」した又はその恐れがある場合は、受益者又は受益者代理人の合意を得てその株式を売却できる等の運用基準を設けます。株価が信託設定時の50%になったときなど「著しく値下がり」の基準を明確化しておくほうが、すべてを受託者の裁量に任せるよりは、受託者の負担が軽減されると思われます。

□ 委託者兼受益者又はその配偶者が、高齢者施設に入所するために資金が必要となった場合などでは、保有する株式等を売却してその資金に充当することができるようにします。

2.資産活用・運用型の上場株家族信託の運用

□ 委託者兼受益者及び配偶者、その家族のための家族信託であるとする信託目的を設定することは一般的です。この趣旨からすると、信託財産とする株式等は頻繁に売買するというよりは長期に保有して配当等の安定的な利益を受益者に還元するというのが本旨でしょう。

□ ただし、世界の社会・経済環境は刻々と変化しており、中長期的な観点で上場株式等を見た場合、今後衰退が見られる領域から発展が期待できる領域へのシフトのための保有株式の銘柄の入れ替えを希望されるケースは存在するでしょう。

□ 受託者の管理能力及び誠実性を信頼している場合には、保有する株式の売買が可能である旨を受託者の裁量権として信託契約書に定めておくことができます。

□ この場合、受託者は受益者又は受益者代理人の合意を得て信託口座内の株式を売買できるとの定めを入れておくことも可能です。

□ しかし、実際は受託者の裁量権に歯止めをかけることは難しく、証券会社も信託契約の中身には介在しません。従って、最低限の歯止めとして、信託内で負債を発生させないために、株の信用取引やFXなど負債の発生する可能性のある取引については、信託契約の中で禁止することを明文化しておくことも一案でしょう。

□ 日頃から、委託者兼受益者は受託者とどのような趣旨に基づいて上場株等の管理・運用・処分を行うのかを、受益者代理人候補である家族を含めて十分な意思疎通を図っておくことが重要となります。

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